「転職エージェントは複数利用すべき?」
「何社くらい利用するのが良いのだろう」
結論、転職エージェントによって保有求人や対応の質が全く異なるので、比較するためにも複数利用すべきで、目安は3~4社登録して最終的に1~2社に絞りましょう。
当記事では過去二度の転職経験がある筆者が「転職エージェントを複数掛け持ちすべき理由」と「メリットデメリット」について解説したものです。
転職エージェントは3社使うべき
結論、転職エージェントは「3社」利用することをおすすめします。
実際に、転職エージェント利用者向けのアンケート調査(有効回答数1,515件)でも、利用社数に応じて、転職活動における満足度が大きく変わり、以下のことが判明しています。
- 1社だと、成功確率が低く、失敗確率が高い
- 3社までは成功確率が上がり失敗確率も下がる
- 4社以上利用しても3社とそう大きな差がない
▼利用社数と転職成功率の分布(有効回答数1,515件)
利用社数 | 満足/成功 | 普通 | 不満/後悔 |
1社のみ | 66.5% (低い) |
24.5% (-) |
8.9% (高い) |
2社 | 70.5% (普通) |
22.2% (-) |
7.3% (普通) |
3社 | 74.3% (高い) |
20.6% (-) |
5.1% (低い) |
4社 | 75.0% (高い) |
20.5% (-) |
4.5% (低い) |
5社以上 | 74.0% (高い) |
22.0% (-) |
4.1% (低い) |
このように、1社のみを利用した場合に比べて、3社以上を利用することで、「満足した割合が10pt近く高くなる」「転職に不満を持っている割合が半分になる」といった差が出ています。
そもそも何社利用しても無料
転職エージェントは何社利用しても無料です。無料で使える理由は、採用企業側から報酬をもらっているからで、実は、転職希望者から金銭を受給することは法律で禁止されています。
上記を見ればわかるように、転職エージェントは採用企業から報酬をもらう対価として、採用支援(募集ポジションにマッチした人材を紹介)をしています。
それも一度や二度ではなく長期的に取引をすることになるので、ビジネス構造上どうしても「転職希望者は商品」となりやすく、ブラックな転職エージェントを利用してしまうと不本意な転職に繋がりかねません。
そのため、必ず複数併用しましょう。
転職エージェントを複数使わないことの弊害
ここでは、転職エージェントを複数使わずに1社のみ利用した場合の弊害を紹介していきます。
- 弊害1.視野狭窄に陥ってしまう
- 弊害2.ブラックエージェントを引くリスクがある
弊害1.視野狭窄に陥ってしまう
転職エージェントを複数使わない弊害一つ目は、選択肢が少ないことによる視野狭窄が、あなたの転職先を決める重要な意思決定を曖昧なものにしてしまうことです。
実際に、一社しか利用しないと、転職支援はたった一人の担当者にしかしてもらえませんし、エージェント一社が持つ限られた企業求人にしか応募できなくなってしまいます。
1社のみ利用 | 3社を併用 |
・担当者1人のアドバイス、転職支援 ・エージェント1社分の求人総数から、1人の担当者があなたに合うと思った求人を紹介 |
・担当者3人分のアドバイス、転職支援 ・エージェント3社分の求人総数から、3人の担当者があなたに合うと思った求人を紹介 |
学校教育のように「明確な正解がある世界」であれば先生は一人でも構いませんが、こと転職活動といった「絶対的な正解がない世界」では、複数の意見を吟味すべきです。
特に転職経験が少ない求職者にありがちですが、「知らなかった」という機会損失を無くすためにも、複数のエージェントに登録しましょう。
弊害2.ブラックエージェントを引くリスクがある
転職エージェントを複数使わない弊害二つ目は、登録した転職エージェントが転職希望者を「商品」としか捉えていない悪徳エージェントであるリスクがあるということです。
転職希望者のキャリアがどうなろうと気にしていないので「とにかく転職させること」を意識して、たくさん求人に応募させる「数を打たせる」関わり方をしてきます。
そして、内定を獲得した途端、企業側の目線に立って早く内定を承諾するように圧力(内定承諾を待っていただけるよう企業様に依頼するので理由を教えてください、など)をかけてきます。
ここまでで転職エージェントは3社利用すべき統計的理由と、1社しか利用しないことによるデメリットについて説明してきました。
ここからは、転職エージェントを複数利用するメリットとデメリットについて順番に説明していきますね!
転職エージェントを複数利用するメリット
転職エージェントを複数利用するメリットは以下の通りです。
- 求人情報の幅が広がる
- 企業の深い情報をたくさん得られる
- 企業の情報を多角的に判断できる
- 相性のいいエージェントに出会う確率が増える
- 幅広い意見を聞くことで、キャリアプランの可能性が広がる
①求人情報の幅が広がる
複数社を活用する際の一つ目のメリットは求人の情報量が増えるという点です。仮に同じ求人を扱っていれば両方から情報をもらえることで理解度が高まります。
それこそ、アドバイザーの能力次第で、例えば「面接官が評価軸に置いているポイント」や「されやすい質問」といった情報を掴んでいるケースがあり選考対策に差が出るものです。
②企業の深い情報をたくさん得られる
転職エージェント複数利用のメリット3つ目は、企業の深い情報をたくさん得られることです。なぜなら、各エージェントによって関係性の深い採用企業はバラバラで、持っている情報に差があるからです。
それこそ、取引1年の大手エージェントより、10年以上の付き合いで経営者と太いパイプがある中小エージェントの方が、あなたに有益な情報を提供できるものです。
実際、転職エージェントの中には、特定の採用企業に特化して転職希望者を有利に紹介できる会社もあるので、複数エージェントを利用して転職活動を有利に進めましょう。
③企業の情報を多角的に判断できる
転職エージェントを複数利用するメリット2つ目は、情報の客観性を担保しつつ転職活動を進められる点です。
1社のみの限られた情報だけでは判断材料に乏しい場合があります。同じ会社の求人でも、ポジティブな情報しか提供してこない会社と、ポジティブとネガティブの両方の情報を提供してくれるエージェント会社であれば、後者の方が求職者にとっては転職活動を進める上で参考になるでしょう。
どんな会社にも少なからずネガティブな情報があるので、複数社のエージェントと付き合うことで、情報の幅を広げ「思っていたものと違った。。。」とならないように気をつけましょう。
④相性のいいアドバイザーに出会う確率が増える
転職エージェントのキャリアアドバイザーには、経験では埋められない相性があるので、できるだけあなたが話していて自然と打ち解けられる担当者を選ぶことも重要です。
なぜなら、キャリアアドバイザーも人間なので、本人と近いタイプの転職希望者でないと「転職先の社風に合うか」「どういった点で面接に苦戦しそうか」などがわからないからです。
なにより心理学的にも、自分と近いタイプだと自然と親近感が湧いて応援したくなる(類似性の原理)ともされています。
⑤幅広い意見を聞くことで、キャリアプランの可能性が広がる
複数の転職エージェントを利用する最後のメリットとしては、幅広い意見を聞くことで、キャリアプランの可能性が広がる、というものです。
複数のエージェントに登録し、何人ものキャリアカウンセラーとやり取りをしていると、様々な意見を聞くことができます。
もちろん、参考になる・ならないは個人差がありますが、結果的にそれがあなたの転職活動のヒントとなりキャリアプランを考える上で参考になることもあります。
短期的な転職活動という括りだけではなく、5年後10年後を見据えた上中朝的的な目線でアドバイスをくれるキャリアアドバイザーもいるので、今後のキャリアの広がりを持たせるためにも複数登録しておきましょう。
転職エージェントを複数利用するデメリット
転職エージェントを複数利用するデメリットは、一言で言うと「たくさん登録すれば登録するほど、連絡や取捨選択、調整が面倒になる」です。具体例を挙げると以下の通り。
- 受け身になって自身で調査を行わなくなる
- コミュニケーションコストが増える
- 同じ求人に応募してしまう可能性がある
このように決してデメリットがないとも言えませんが、時間をかけて対策すべき転職活動において、全面サポートしてくれるサービスを「面倒だから」と使わないのはもったいないことです。そのため、あくまで参考までに押さえておきましょう。
①受け身になって自身で調査を行わなくなる
転職エージェントを複数利用しているがゆえに、紹介求人や受け取る情報に甘えて、自分自身で調査をしなかったり、思考停止になりやすかったりするのがデメリットです。
例えるならば、実家暮らしで両親に甘えた生活をしすぎて、自ら料理したり掃除をしたり、といった家事全般ができなくなるようなイメージでしょうか。
それこそ転職エージェントでは入手できない(どうしても言えない)ような情報はたくさんあるので、以下のような情報をしっかりと調査するようにしてください。
- IR、事業状況、今後の見通し
- 応募企業の内部情報(OB訪問や口コミ)
他にも、エージェントに自分から積極的にアプローチをかけることで、以下のような転職活動の参考になる情報を入手できるかトライすると良いでしょう。
- ネガティブな情報
- 面接官のパーソナリティ、評価点
②コミュニケーションコストが増える
複数のエージェントに登録すると、その分の転職エージェントのキャリアアドバイザーとやりとりが発生してしまうのも、デメリットの一つです。
特に、在職中に転職活動を行おうとした場合、仕事の合間を縫って、アドバイザーとやり取りをしなければならず、単純にコミュニケーションの負担が増えてしまいます。
③同じ求人に応募してしまう可能性がある
複数の転職エージェントを使いながら、同じ企業求人に複数エージェント経由で応募してしまわないように注意する必要があるのもデメリットの一つです。
別の転職エージェントを利用することを快く思わないキャリアアドバイザーも多く、なにより企業側との間に無駄な工数を割かせてしまい、不信感を抱かれることとなるので避けるようにしましょう。
転職エージェント利用の注意点と活用ポイント
転職エージェントに登録後、担当アドバイザーと面談をして、求人を紹介してもらうことになりますが、効果的に活用するために以下のポイントを押さえておきましょう。
- ①転職活動用のメールアドレスを作る
- ②経歴と希望条件を事前に整理しておく
- ③アドバイザーにはこまめに返信する
- ④推薦文の内容は必ず確認する
- ⑤むやみやたらに求人へ応募しない
- ⑥面接でどのような質問がされるかを聞く
- ⑦選考企業の情報は口コミサイトでも集める
- ⑧言いなりにならず自分の頭で判断する
- ⑨担当者と合わなければ担当変更を依頼する
- ⑩転職エージェントは1社だけに依存しない
①転職活動用のメールアドレスを作る
転職エージェント・サイトに登録すると、求人や選考の連絡がたくさん送られてくるので、転職活動用のアドレスを作成しておきましょう。(作るなら「Gmail」がおすすめです)
登録している転職サービスの種類や数にもよりますが、多いと1日に20~30件のメールが送られてくることもあるので、他の連絡が埋もれてしまいかねません。
転職用のアカウントを作成していた場合、転職活動を終えたらそのアカウントを使わなければいいので、退会の必要がないというのもおすすめポイントです。
②経歴と希望条件を面談前に整理する
転職エージェントとの面談時間で、あなたの希望をより正確に伝えることができるように、下記3点はあらかじめ整理しておきましょう。
- 転職理由
- 転職先に希望する条件
- 履歴書と職務経歴書
1つ目の「転職理由」は、口頭で説明できるくらいに言語化しておけば大丈夫です。
ただ後述しますが、ここで伝えた内容が推薦文に反映されるので、ネガティブな表現(例:飽きた、人間関係の不満)ではなく、ポジティブな表現(例:これがしたい、こういう環境に行きたい)で伝えることをおすすめします。
2つ目の「転職先に希望する条件」はまだ考えきれていなければ、担当アドバイザーと一緒に相談する形でも構いません。
その場合、あなたに似た経歴を持つ方の転職実績をもとに、いくつかのキャリアパターンを提案してくれるはずです。(とはいえ、業種や仕事内容、給与条件くらいは目星をつけたいですね!)
3つ目の、履歴書や職務経歴書は、求人に応募するためにも必要ですが、担当アドバイザーにスキルや経歴を正しく伝えるために役立つので、必ず用意しましょう。※添削もしてもらえます。
これまでの経歴やスキルに嘘をつくことは絶対にやめてください。
もし転職後にバレたら、内定・入社が取り消されることもありますし、何より嘘をついたという過去があなたを一生苦しめることになります。
ただ、自身の経歴やスキルを魅力的に見せたいという気持ちは非常にわかるので、嘘にならない範囲で、細かい言い回しや表現の工夫をするに留めてください。
③アドバイザーにはこまめに返信する
相手の提案や連絡にはこまめに返信をするようにしましょう。転職を本気で考えていることを示すことで、彼らの中での優先度が高まります。
なぜなら、アドバイザーにとっては、サポートしている求職者が転職することが「仕事の成果」となるので、 より転職しそうな方に時間をかける傾向があるからです。
在職中の転職活動だとなかなか時間を取りにくいかと思いますが、あまり返信をしないと提案やサポートをしてもらえなくなるので、遅くとも24時間以内には返しましょう。
④推薦文の内容は必ず確認する
担当アドバイザーは企業側に求職者を紹介するとき、職務経歴書の前に「推薦文」を添えて提出するのですが、その内容は必ず確認してください。
ほとんどの場合で推薦文は1番最初に記載しているので、もしその内容が事実と異なったり、表現のニュアンスがいまいちだったりすると選考で不利になります。
一方で、多少経歴が荒れている求職者であっても、担当アドバイザーが絶賛している方であれば、経歴で表現されない人柄に期待してお会いしたくなることもあります※経験談
⑤むやみやたらに求人に応募しない
書類が通りにくい第二新卒の転職でよくあるケースなのですが、転職エージェントから推薦されてくる求人をよく見ずに、思考停止で応募するのはやめてください。
理由は、書類が通って面接することになったあと、モチベーションが湧かないまま面接を受けることになり後悔するからです。(第二新卒だと当日無断欠席する方も多いです。。)
私も第二新卒で転職活動をしたときに、上記の罠に陥りました。
リクルートをはじめとした大手転職エージェントだと、登録条件に合わせて自動で求人がリコメンドされるのですが精度はそう高くないので、一つひとつしっかりと見極めましょう。
⑥面接でどのような質問がされるかを聞く
面接前に「面接ではどのような質問がされるのか」を必ず聞いて対策するようにしてください。
転職エージェントは転職のプロなので、面接で聞かれる質問パターンをノウハウとして必ず保有しています。
それこそ、あなたが受ける面接で、「他の求職者がされた質問内容」を把握していることもあります。(担当アドバイザーは、面接直後の求職者に電話をかけて、された質問をヒアリングしていることが多いので)
さらに、その業界ならではの選考アドバイスをもらえることがありますし、面接練習に付き合ってくれることもあるので、気軽に頼ることをお勧めします。
補足:面接質問はパターン化されているケースが多い
中途面接では、一次面接では人事担当が、二次面接では現場の管理職が面接官を務めることが多いですが、誰に対しても同じ質問をしているケースが多いです。
理由は、面接官目線で考えればわかりますが、同じ質問を複数の候補者にぶつけることで「比較」できるようにしたいからです。(採用ミスを減らす有効な方法として知られています。)
特に、人事が面接官をする一次面接ではほぼ100%同じ質問がされています。(面接内容を次の面接官に伝わるように管理ツールに記載するのですが、フォーマットが決まっていることが多いので。)
そのため、転職エージェント側に「その企業のN次面接では、どのような質問がされたのか」を聞いて、事前に対策しておきましょう。
⑦その企業を退職した人から一次情報を集める
企業への意向が固まってきたら必ず、その企業を退職した人からの一次情報を集めるようにしてください。以下に記載するような情報は信じてはいけません。
- 口コミサイトに書いてある情報
→人事部によって対策されています。私も過去対策していました。 - 面接で採用担当から聞いた情報
→嘘です。ポジショントークしかしません。 - 転職エージェントから聞いた情報
→転職エージェントが企業側を悪くいうことはありません。あっても隠します。 - その企業の評判記事
→特定の会社を事実に基づいて非難することは「名誉毀損」に該当して訴訟される恐れがあるので、本当に悪いことは書けません
そのため、転職先が本当に信用できるかどうかは、その企業を退職した人にヒアリングするようにしましょう。(特に民度が低くなりがちな中小企業)
社会人向けのOB訪問ツールだと「キャリーナ」や「マッチャー」がおすすめです。マッチャーは新卒向けですが「社会人ですが相談したいです!」と言えば、ほとんどの方は応じてくれます。
⑧言いなりにならず自分の頭で判断する
基本的に転職エージェントは求職者側の味方ですが、企業から報酬をもらうというビジネスモデル上、企業側の味方になりやすい構造にあります。
例えば、内定を2社からもらったとき、多少社風があっていなかったとしても敢えて言わず、マージン額の高い『年収が高い企業』をお勧めしてくることもあるかもしれません。(というかほぼ100%そうなります。)
そのため、思考停止で信じ切って全てを鵜呑みにするのは危険です。
⑨担当者と相性が合わないと思った場合は担当変更を申し出ること
転職アドバイザーも人間なので相性があります。
例えば、ぶっきらぼうな性格の担当者もいれば、 温和で人当たりの良い担当者もいます。
また、経験が浅い担当者もいれば、専門性が高く非常に経験が豊富な担当者もいます。
転職活動はあなたの人生を左右する非常に大事な事柄なので、少しでも合わない・物足りないと思った担当者は変更してもらいましょう。
ちなみに、例えば『専門知識が浅く、頼りない』と伝えれば、より専門性が高くて経験豊富なアドバイザーが出てくるケースが多いので、遠慮なく変更を申し出ましょう。
⑩転職エージェントは1社に依存しない
転職エージェントは1社だけに依存せず、複数社併用しましょう。
なぜならば、保有している求人がそもそも違いますし、担当アドバイザーによってアドバイスの内容が違うことがあるからです。
人間は心理的めんどくささのあまり、シンプルにしようとする傾向にありますが、少ない選択肢の中からの意思決定はミスにつながりやすい、という統計結果もあります。
そのため、求人の幅を広げるためはもちろん、より多くのアドバイザーからアドバイスをもらい失敗しない判断をするためにも、最低3社以上は併用することにしましょう。
最後に
本記事では転職活動の際にエージェントを複数社利用する際のメリットやデメリット、活用のポイントについて解説しました。
効率よく転職活動を進めるためにも、転職エージェントは複数利用(目安は3社です)するようにしてください。
転職活動だけでなく、転職後のキャリアを見据え最適な選択肢が取れるよう、複数社のエージェントとうまく付き合いながら活用してもらえれば幸いです。