発達障害を採用してしまったと悩んだら|配慮や向き合い方を管理職が解説

「発達障害を採用してしまった…」「どう接するべきかがわからない」と悩まれますよね。私も管理職をしているので痛いほど気持ちがわかります。

この記事のまとめ
  • 解雇は現実的ではない
    日本では法的にほぼ解雇ができないと思ってください。まずは業務調整をおこない、今の環境で適応できないかを確かめましょう。
  • 早めに人事部と連携して異動させよう
    人事部と連携して、本人が活躍できる部署に異動させてください。できない仕事をさせ続けることは本人にとってもマイナスです。早めに頭出ししておきましょう。
  • 会社は学校ではないのでドライさも必要
    あなたの部署の生産性を最大化できる合理的な手段をとってください。現場に適応することがない社員に、管理職の時間を投資し続けることは、経営上よくありません。

このページでは「発達障害の部下との接し方に悩む方」向けに、仕事やコミュニケーションにおける「配慮・向き合い方」を解説していきます。

解雇はできない。業務内容を調整しよう

まず、正規雇用で「解雇」は現実的ではありません。もちろん業務遂行能力が著しく低かったり、何ヶ月に渡っても業務怠慢が改善しなければ、懲戒解雇を進めることもできますが、法的措置を取られるとほぼ負けます

そのため、自己都合で退職してもらうまでは「合理的配慮」をおこないながら、適切にコミュニケーションをとりつつ、問題の火種をなくしくことをお勧めします。

事業部管理職がやるべきこと

詳細は後述しますが、まずは全体像からお伝えしていきます。

STEP

仕事の割り振りで配慮する

  1. 短期的に業務内容を調整する
  2. 指示は簡潔かつ明瞭に言語化する
  3. 正しく伝わっているかの確認は丁寧に行う
  4. 依頼は“本人の納得感”を重視する
  5. マルチタスクは避け、定期的に進捗確認する
STEP

マネジメント方法を変えてみる

  1. 特別扱いをせず公平であり続ける
  2. 個性を理解して、活躍できる環境を用意する
  3. 常に冷静に、自分の発言と態度を客観視する
  4. 過去を責めず未来に向けて建設的に話をする
  5. 定期的に相談に乗ってガス抜きをする
  6. 一定の距離感を維持して深入りしない
STEP

人事部と連携して部署異動を調整する

どの程度問題があるか次第ですが、早めに頭出しをしていくことをおすすめします。

仕事を用意できない場合は、人事部と連携して「異動」を検討してください。大手企業なら、必ず「そういう部署」があります。

発達障害の部下に仕事面ですべき配慮

発達障害の傾向がある部下に仕事を割り振るときには、下記5点を重視していくことをおすすめします。

  1. 短期的に業務内容を調整する
  2. 指示は簡潔かつ明瞭に言語化する
  3. 正しく伝わっているかの確認は丁寧に行う
  4. 依頼は“本人の納得感”を重視する
  5. マルチタスクは避け、定期的に進捗確認する

会社は学校ではないので「管理職がどこまで部下に合わせるべきか」という論点はありますが、日々の接し方を変えるだけで改善する可能性があります。

発達障害の部下に仕事面ですべき配慮①
短期的に業務内容を調整する

部下の特性を「障害」として機能させないために、適応できる/適応できないを把握して、業務内容を調整してください。これは発達障害に限らず、マネジメントにおいて最重要です。

どんなに努力をしても適応できない仕事を任せてしまうと、管理職側のコスト(コミュニケーションや巻き取り業務)が跳ね上がるだけなので、独自で完遂できる仕事を割り振りましょう。

例えば、身長160cmでは、どんなに努力をしてもバスケのダンクシュートはできません。激しい練習も無意味だとわかりますよね。そもそも身長が大事なスポーツ全般が向いていません。190cmあるならまだしも160cmなら別のスポーツをさせてください。

大人は成長しません。身長がほとんど伸びることがないように、脳機能も発達しないのです。「努力すればできるのか」「適応できるのか」を見極めましょう。

発達障害の部下に仕事面ですべき配慮②
指示は簡潔かつ明瞭に言語化する

業務指示は簡潔かつ明瞭に言語化していくようにしましょう。発達障害(特にASD傾向がある)の方の場合、曖昧なコミュニケーションは苦手です。特に、多くの方が、耳から入る情報の処理に弱い傾向にあるので、口頭での説明はほとんど通じていないと思ってください

場合によっては前提認識部分で大きなズレが生じてしまうので「面倒だから」と言語化を怠らず、テキストベースのコミュニケーションを第一言語にしましょう。

業務指示で意識すべきこと
  • 納期は分秒単位で指定
    • 「はやめに」「余裕あるときで」は禁止
  • 最終のアウトプットイメージを共有
  • 具体的な作業手順を整理して伝える

このように、後から読み返せばわかるように言語化しておくことが重要です。

面倒かもしれませんが、管理職が30分作業することで、当人の数時間分の稼働状況が変わります。組織の生産性を高めるためにも管理職がおこなうべき責務です。

発達障害の部下に仕事面ですべき配慮③
正しく伝わっているかの確認は管理職が行う

部下に初めて依頼する仕事の場合は、「本当に正しく伝わっているのか」の確認を、管理職自らが率先して行ってください

具体的には、下記ステップで確認しましょう。

伝わったことを確認するステップ
  1. ポイントを箇条書きで整理しておく
  2. ポイントをなぞりながら口頭で説明する
  3. その場で、説明した内容を復唱させる
  4. その場で、試しに一つやらせてみる
  5. 1時間後に進捗状況を確認する

このように“正しく伝わっているか”の確認は管理職側でやりましょう。特に、初めての仕事では「わからないなら聞きにきて」と当人に委ねてはいけません。

  • ここは言わなくてもわかるだろう
  • しっかりと伝えたので理解してくれているはず

という思い込みをしてはいけません。

後から“コミュニケーションで齟齬があったこと”が発覚したら管理職の過失(理解度の確認を怠ったミス)だと思って、対応してみてください。

発達障害の部下に仕事面ですべき配慮④
依頼は“本人の納得感”を重視する

仕事の依頼をするときは「本人が目的や内容に納得しているかどうか」が重要です。

特に、発達障害の傾向がある場合、自身が納得していることに“高い集中力”を発揮するので、しっかりと意味づけをおこないましょう。

依頼内容に意味づけをしよう
  • 何のためにやる仕事か
  • なぜ、あなたに任せるのか
  • この仕事で、世界はどうよくなるのか
  • この仕事で、何を得ることができるか

人が仕事を始める理由の大部分は“お金を得るため”ですが、それだけでモチベーションは続きません。人間は、自分が心から納得する“大義名分”に酔いたいと思う生き物なので、夢を見せてあげてください。

発達障害の部下に仕事面ですべき配慮⑤
マルチタスクは避け、定期的に進捗確認する

そもそも人間は、複数の事柄を同時並行させること(マルチタスク)が苦手で、特に発達障害だとその傾向が強いので、なるべくシングルタスクで目の前のことに集中させてあげましょう

その上で、毎朝「前日の進捗確認」と「当日の仕事の進め方を相談する」ための時間を設定しておくことをおすすめします。(ちなみに、夕方に設定すると、その時間が気になって仕事の手が止まるので注意です。)

次は“仕事”以外における向き合い方、コミュニケーション部分での注意点を見ていきましょう!

発達障害の部下のマネジメント方法

仕事だけではなく、マネジメント方法でもいくつか意識すべき点があるので解説していきます。具体的には、下記のポイントを重視していきましょう。

部下との向き合い方
  1. 特別扱いをせず公平であり続ける
  2. 個性を理解して、活躍できる環境を用意する
  3. 常に冷静に、自分の発言と態度を客観視する
  4. 過去を責めず未来に向けて建設的に話をする
  5. 定期的に相談に乗ってガス抜きをする
  6. 一定の距離感を維持して深入りしない

いずれも管理職としての一般論ではありますが、発達障害の部下は揉めやすいのでより慎重に接する必要があります。順番に見ていきましょう。

発達障害の部下のマネジメント方法①
特別扱いせず公平であり続ける

発達障害があろうがなかろうが「理由のない特別扱いはせず、組織として公平であること」が管理職として重要です。特に、なにかしらの障害がある方は「迷惑をかけていて申し訳ない」と人より障害がある自分を卑下しやすいので、フラットに接する意識が重要です。

例えば、評価をおこなうときは、個人的な好き嫌いではなく、必ず根拠を示して評価を行う必要があります。(例:目標進捗率115%と良い結果、等)

そもそも人間だれしも得意不得意はあり、発達障害と呼称されている方も「特定のこと(例:コミュニケーションや感情処理)が苦手なだけ」に過ぎません。そのため「障害者だから△△する」ではなく「単に◯◯が苦手だから、△△という対策をする」という考え方が重要です。

発達障害の部下のマネジメント方法②
個性を理解して、活躍できる環境を用意する

管理職として重要なのは、部下の個性(障害特性含む)を理解したうえで、周囲と問題を起こさず、モチベーションを維持し続けるための環境を用意することです。

そもそもこれが管理職の仕事です。障害の有無関係なく当たり前のものとして、全員とすり合わせることをおすすめします。

部下と擦り合わせしておきたいこと
  • 何をしたいのか、得たいのか
  • 何をストレスに感じているのか
  • 何がモチベーションに繋がるのか
  • 何を苦手(あるいは得意)としているのか

特に、発達障害の傾向を自覚している方は、これまでの生きづらさから「何が得意で、何が苦手か」を言語化できていることが多いです。

まずは部下と腹を割ったコミュニケーションをとり、現状の悩みや要望を理解することから始めましょう。

発達障害の部下のマネジメント方法③
常に冷静に、自分の発言と態度を客観視する

管理職はときに「感情を殺して部下に向き合うこと」が重要です。部下の自己中心的な発言に、感情的になる気持ちは痛いほどわかりますが、常に冷静に会話しましょう。

日々、上司部下の板挟みや数字目標のストレスで大変かと思いますが、それでもあなたの自己満足で叱ったり、責めたりしてはいけません。なぜなら、あなたのたった数分の接し方次第で、部下の数時間〜数日のパフォーマンスが大きく変わるからです。

どんなに理不尽で許せなかったとしても、常に冷静になって、部下との時間は全て「部下の能力発揮を最大化するため」に使いましょう。

発達障害の部下のマネジメント方法④
過去を責めず未来に向けた建設的に話をする

発達障害だろうが関係なく、職場の問題には全て「どうしたらよくなるだろうか」という未来を建設的に議論することが重要です。

これまでの行動や失敗を責めたり、叱ったりしてはいけません。人はみんな違う価値観を持っているので、解釈の余地がある争いに“あなたの正解”を一方的に押し付けるのもおすすめはしません。

コミュニケーションのポイント
  • 過去の話を掘り返さない、責めない
  • 建設的かつ前向きに、未来の話をする
  • 一方的に正解を押し付けずに、お互いが納得できる道を探す

特に、ADHDのある方はよくトラブルを起こしますが、決して他人を攻撃したいわけではありません。感情のコントロールを苦手としているだけで、当人にも悪気はなく、後々、突発的な行動をとってしまったことを後悔していることがほとんどです。

センシティブな会話をするときは、対処すべき“問題”という意識で相対するのはなく、同じ悩みを抱える“仲間”として、目線を合わせていくスタンスが重要です。

発達障害の部下のマネジメント方法⑤
定期的に相談に乗ってガス抜きする

心理的安全性”の向上を目的に、定期的に「担当業務の話以外」を中心として相談に乗ることで、ガス抜きをすることをおすすめします。

特に、発達障害の傾向がある方は、日々の困難からストレスを感じやすく、うつ病や適応障害をはじめとした精神疾患になりやすいので、定期的な場が必要です。

1on1で話すテーマ
  • 体調やメンタルの健康確認
  • 本人の能力開発やキャリアサポート
  • 本人がしたい話(プライベートや不満等)
  • 本人が聞きたい話(仕事やあなたのこと)

何よりも、1on1ミーティングそのものが本人の負担とならないことが重要です。まるで会議のように事前準備をさせる、なんてことはしないでください。

また、部下のガス抜きが目的であり、部下の状況把握・コントロールが目的ではありません。余計な詮索はせず、あくまでカジュアルな温度感で接しましょう。

発達障害の部下のマネジメント方法⑥
一定の距離感を維持して深入りしない

発達障害(特にADHD)の方は、感情的なコミュニケーションを取りやすいので、下手に距離感を近づけず、全てを真に受けないことも重要です。

特に、距離感が近づけすぎると「◯◯さんなら私の気持ちを理解してくれると思っていたのに!」と、理不尽に爆発するケースがあるので注意してください。

あくまで一定の距離感を維持しましょう。他にも下記の問題が発生することがあるので、軽く目を通しておいてくださいね。

事例1.頻繁にメールやチャットを送ってくる

本人にとっても大事な連絡はそう多くないので全てに返信せずに、重要なことだけ返信することが大事です。

本人も突発的に送った内容なので、その後は忘れていることが大半です。

事例2.つい考えていることの“逆”を言ってしまう

心理学で言う防衛規制「反動形成」です。小学生が好きな異性にいじわるしちゃうやつですね。

上手く察して「本当はそんなこと思っていないよね。。」と寄り添って傾聴する姿勢が大事です。

あなたのコニュニケーションの取り方次第で、お互いに働きやすくなる、ので意識してみてください。

最後に、発達障害に関して知っておきたい基本知識を見ておきましょう。

発達障害の適性を知って対応しよう

ここからは管理職として知っておきたい発達障害の基本知識について解説していきます。発達障害といっても大きく3分類に分けられており、それぞれ職場に求められる合理的配慮は大きく異なるので、個別に確認していきましょう。

発達障害の分類
  1. ASD(自閉症スペクトラム障害)
    コミュニケーションが苦手 特定のものや行動へのこだわりが強い
  2. ADHD(注意欠如・多動性障害)
    年齢に比べて落ち着きや注意力、集中力がない 感情のコントロールができない
  3. LD(限局性学習障害)
    特定の学習(読む、書く、計算)が苦手

ただ、職場におけるコミュニケーションで問題となりやすいのは「①ASD」「②ADHD」なので、この2点にのみ重点的に解説していきます。

  • 障害の特徴
  • 仕事をする上での困難
  • 職場環境に必要な合理的配慮
  • 向いていない仕事、向いている仕事

内容はあくまで、より多くの人に当てはまるであろう“例”です。症状が複雑な発達障害の場合、人によって異なる部分が多いので、大枠だけ参考にしてくださいね。

① ASD(自閉症スペクトラム障害)

ASDとは、コミュニケーション面で難を持つ障害です。「自分の主観でしか物事を捉えられない」「空気を読むことができない」「常識が通じない」と言われてしまう特徴があります。

その病像は『スペクトラム(一定の幅)』と名称に付く通り、種類や重症度の点で非常に多彩です。

もともとは「自閉症」「アスペルガー症候群」と呼ばれていた2つの障害でしたが、2013年に名称が統合されました。これまで何度も名前が変わるほど、正確な判断が難しいとされている障害です。

ASDの特徴

人によりますが、下記で紹介する特徴のいずれか(あるいは複数)を持つ場合が多いです。

  1. コミュニケーションが苦手
    例:曖昧な表現を理解できない
    例:空気が読めない、意図を察することができない
  2. 特定の事柄や行動に強いこだわりを持つ
    例:何かを決めたら二度と変更できない
    例:他の人が気にしないことを異常に気にする
  3. (一部の感覚が過敏または鈍麻)
    例:光(視覚)を強く感じやすい
    例:温度(触覚)を強く感じやすい

このように、ASDの方は、曖昧さを汲んで理解することができなかったり(空気が読めない)、さらに“何か”に強いこだわりを持っていたりすることが特徴です。

そのため、職務においても数々の課題に直面することでしょう。いくつかその例をあげていきます。

ASDが仕事で直面する困難の例

  1. コミュニケーションが苦手
    →上司の曖昧な指示を理解できない
    →白黒はっきりしないとストレスになる
  2. 特定の事柄や行動に強いこだわりを持つ
    →予定にまったく融通がきかない
    →ふと気になったことが頭から離れず集中できない
  3. (一部の感覚が過敏なことがある)
    →部屋の明るさやブラインドにストレス(視覚)
    →冷暖房の温度管理に強いストレス(触覚)

このように、業務指示の理解を難しく感じる方や、曖昧なコミュニケーションや予定変更に強いストレスを感じる方が多いです。

そのため、必要な配慮として「①明瞭なコミュニケーション」であったり「②当人が持つこだわりに合わせること」が職場に求められます。(人によって異なるので個別相談は必須です。)

ASDに必要な合理的配慮

基本的にASDの方の多くは、上司や同僚の曖昧なコミュニケーションにストレスを感じることが多いので、明瞭に言語化していく配慮が必要です。

  1. コミュニケーションが苦手
    →明瞭なコミュニケーション
    ・指示は明瞭に言語化(文章で伝える)
    ・曖昧な表現はせずに、はっきりと伝える
    例1. あれ、これ、といった指示代名詞は使わない
    例2. 納期は1分1秒単位で伝え、幅を持たせない
  2. 特定の事柄や行動に強いこだわりを持つ
    →当人が持つこだわりに合わせること
    ・一度決めたことを変えず、計画通りに進行させる
    ・複数のことを同時に頼まない(シングルタスク中心)
  3. (一部の感覚が過敏なことがある)
    →当人の過敏な感覚に配慮する
    ・ブラインドは開けない(視覚)
    ・耳栓やイヤホンの使用(聴覚)
    ・冷暖房の温度を一定値に変更(触覚)

上記はあくまで一例ですが、当人が苦手としていることをヒアリングした上で、ストレスなく働くために必要な“合理的配慮”の内容を検討してください。

ASDが向いていない仕事

ASDの方は、下記の特徴を持つ仕事は向いていません。障害特性との相性が悪いので、当人は強いストレスを感じることになります。

  • マルチタスクな仕事
  • 顧客コミュニケーションがある仕事
  • 変化が激しく柔軟な対応が必要な仕事
  • ルールやノウハウが体系化されていない仕事

上記の業務を避ければ、興味を持ったものに対して異常なほどの集中力を発揮する(過集中)場合があるので、十分な活躍を見込めます。

ASDが向いている仕事

おおむね以下の特徴のある仕事が向いている傾向にあります。

  • 一人でコツコツとできる仕事
  • ルールやマニュアルが明瞭な職種
  • デスクワーク(視覚情報が重要なので)

ただ、得意不得意は人それぞれなので、全員に該当するわけではありません。当人ができること、興味があることに向き合うのが重要なので、あくまで参考程度にしてください。

② ADHD(注意欠陥・多動性障害)

ADHDとは、注意欠如や多動性といった行動特性がある障害です。「落ち着きがない」「感情的で子供っぽい」と言われることが多い特徴があります。

ここ数年でよく名前を聞くようになりましたが、職場・上司側がADHDの特徴を理解して適切な距離を保てば、スムーズなコミュニケーションが可能になります。

ADHDの特徴

特徴は「不注意」「多動-衝動性」の2つです。

  1. 不注意
    例:集中力がなく、気が散りやすい
    例:綿密に注意をすることができない
  2. 多動-衝動性
    例:感情コントロール、我慢ができない
    例:他者が予測できない突発的な行動をとる

このように、集中力が持続しない“不注意”と、感情のブレーキが効かず落ち着きがない“多動-衝動”の特徴を持つのがADHDです。

ADHDが仕事で直面する困難の例

飽きっぽくて続かないことから、“無責任”な行動をとってしまう場合もあれば、感情のブレーキが効きにくいので、“些細な不満からトラブルに発展する”場合もあります。

  1. 不注意
    →小さなミスが多くなる
    →タスク漏れが多くなる
    →仕事を完遂できない、納期を守れない
  2. 多動-衝動性
    →冷静さを失い衝動的な決断をする
    →感情を押さえられず攻撃的になってしまう
    →人間関係で衝突を起こしやすい

このように、ADHDの方は、“不注意”が強い方だと「最後までやり遂げることができない」ことが多く、“多動-衝動性”が強い方だと「人間関係で衝突を起こす」ことが多くなります。

ADHDの方は比較的、新しい物を考えるときの“企画力”が高い人が多いのですが、すぐに飽きてしまい実現までやり遂げることができない、というジレンマを抱えていることが多いです。

ADHDに必要な合理的配慮

「不注意」は、注意が散ってしまう要因を減らせば軽減されます。一方で「多動-衝動性」は相手がいることでトラブルに発展するので「一定の距離を保つこと」が重要です。

  1. 不注意
    →仕事に集中できる環境を整える

    例1. 机についたて設置して視線を遮る
    例2. 耳栓やヘッドホンで外部音を遮断する
    →ミスを許容できる仕事を与える
    追加で別担当によるダブルチェックを徹底する
  2. 多動-衝動性
    →理解してもらい、一定の距離感を維持

上記はあくまで一例ですが、当人が苦手としていることをヒアリングした上で、ストレスなく働くために必要な“合理的配慮”の内容を検討してください。

衝動性が高いADHDの場合だと、つい感情で動いてしまって後から後悔することが多いものです。職場とトラブルにならないためにもまずは「理解すること」が重要です。

ADHDが向いていない仕事

ADHDの方は、下記の特徴を持つ仕事は向いていません。障害特性との相性が悪いので、当人は強いストレスを感じることになります。

  • 単純作業を繰り返す仕事
  • ミスが許されない仕事
  • マルチタスクな仕事
  • 高いチームプレイが求められる仕事

上記の仕事を割けたうえで、当人が興味を持てて続けられそうな仕事を与えるようにしてください。本人が納得感を持って仕事ができるように「仕事の意義を説明すること」が重要です。

ADHDが向いている仕事

それぞれの興味やスキルに大きく依存しますが、一般的には変化と創造性が求められ、短期間で結果が出る仕事が向いているとされています。

  • 変化がある
  • 自分の興味や創造性を追求できる
  • やった施策の効果が短期間で実感できる

例えば、以下のような仕事です。

ADHDに向いている仕事の例
  • 営業職/コンサルティング
    単一商品の販売ではなく、クライアントの課題をヒアリングして柔軟に提案するコンサルティング色の強い営業職のほうが強みを発揮できます。R&D等の研究職に従事する方も多いですね。
  • WEB系全般(企画、広告マーケ、クリエイティブ、デザイン等)
    施策効果がすぐに確認できないSEOよりは、短期間でPDCAを回すことができるWEB広告やSNS、Youtubeなどの方が刺激があって長続きします。

ただ、「ADHDだからこの仕事がいい」という捉え方は主語が大きすぎるので注意してください。例えるなら「男性だから力仕事が向いている」くらいのものなので、参考程度にとどめましょう。

③ LD(限局性学習障害)

LD(限局性学習障害)とは、全般の知的発達に遅れはないものの、特定の学習能力(聞く、話す、読む、書く、計算する等)に困難が生じる障害です。

よくあるタイプとしては下記の3つがあります。

  1. 読字障害(ディスレクシア)
    文字の“読解”に困難が生じる
  2. 書字障害(ディスグラフィア)
    文字を“書くこと”に困難が生じる
  3. 算数障害(ディスカリキュリア)
    “計算をすること”に困難が生じる

このように、知的能力障害がなく、適切な教育環境や教育歴と本人の努力や意欲があるにもかかわらず、特定の学習に困難が生じることが特徴です。

仕事だと、マニュアルやテキストを読むことができなかったり、耳から入ってくる情報の理解も困難が生じたりと、コミュニケーション全般で困難が生じやすい傾向にあります。

最後に

ここまで「発達障害を採用してしまった…」と部下の扱いに困っている管理職の方向けに、向き合い方や必要な配慮を解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

発達障害があると、その特性に合わせて仕事上で困難が生じやすく、適切な配慮をしないと、仕事のミスが増えたり、トラブルに発展したり、といったことが珍しくありません。

ただ、管理職側が、障害特性を理解して適切な仕事を割り振りうまく管理を行えば、問題行動は減り、関係性が改善する可能性は十分あります。

当ページを参考に、ぜひ前向きに向き合ってみてください。このページを読んだあなたの人生が、より豊かになることを祈っています。