ミラーリングとは
ミラーリングとは、相手の仕草や言葉に、動きを、鏡に映った自分のように真似することで、相手からの好意や親しみ、信頼感を得られるようになるという技法です。
自分を相手の「鏡(Mirror)」にすることに由来しており、対人関係を円滑にするコツや恋愛、はたまたビジネスを成功に導くテクニックとして広く知られています。
ミラーリングの実証実験
ミラーリングの研究で代表的なものは、アメリカの心理学者ターニャ・チャートランド(Tanya Chartrand)とジョン・バー(John Bargh)が1999年に実施した実験です。
実験では、初対面の2人でペアを2組作り、とある写真をテーマに話し合うよう指示するのですが、片方のペアだけに「相手の動きを模倣」するように指示を行いました。
そして、話し合いが終わったのちに、両方のペアに対して相手の好感度をヒアリングしたところ、相手の動きを模倣するように指示を受けたペアは、指示を受けていなかったペアに比べて、お互いの好感度が高く、話し合いも円滑に進んだという結果となりました。
この実験から、相手を意識的に模倣すること、すなわちミラーリングを行うことで、対人関係にプラスの影響を及ぼすことが科学的に実証されたとしています。
ミラーリングに関連する心理効果
- 類似性の法則
- ペーシング
- バックトラッキング
ミラーリングに関連する心理効果#1
類似性の法則
類似性の法則とは、自分の共通の性質を持った、すなわち類似性のある人に対して、無意識に親近感を持ったり好意を持ったりするという心理法則です。
例えば、出身地、年齢、国籍、人種、学歴、趣味、好きな食べものやお気に入りのアーティスト、などといった共通点があると親密な関係になりやすくなります。
そして、仕草やポーズなどを寄せる「ミラーリング」においても、「類似性の法則」の「親近感が高まり好感度が上げる効果」は発揮されるのだとされています。
ミラーリングに関連する心理効果#2
ペーシング
ペーシングとは、会話のペースを相手に合わせるテクニックのことで、口調や話すスピード、声のトーンに大きさ、テンポ感などを寄せていくことで、親近感が高まることが知られています。
ミラーリングに関連する心理効果#3
バックトラッキング
バックトラッキングとは、相手の発言した内容をそのまま返すテクニックのことで、「オウム返し」とも呼ばれています。
話をしっかりと聞いていることが相手に伝わりやすく、相手はそのまま続きを話しやすくなるため、コミュニケーションを円滑に進める効果が期待されます。
- ミラーリング
→仕草や動きを合わせる - ペーシング
→会話のペースを合わせる - バックトラッキング
→発言内容を繰り返す
類似性の法則の活用シーン
類似性の法則に始まる「ミラーリング・ペーシング・バックトラッキング」は、対人関係や恋愛、ビジネスの場など、人間同士が社会的に関わり合う場面で有用です。簡単に見ていきましょう。
類似性の法則の活用シーン#1
恋愛編
諸説ありますが、簡単にいうと「相手のペースに合わせること」がもっとも効果的でしょう。
- 会話のペースを合わせる
- リアクションの程度を合わせる
- メッセージの温度感を合わせる
それでは説明していきます。
①会話のペースを合わせる
これはペーシングというテクニックで、多くの方は、自分と同じスピード感で話してくれる人に信頼感や安心感を覚える傾向にあります。
②リアクションの程度を合わせる
話すペースに似ていますが、相手の会話にうまく合わせるように相槌を打ったり、相手が楽しそうに話しているときは自分も笑顔を心がけたりといった「反応」を指します。
他にも、相手がリラックスした姿勢をとったら自分も合わせたり「声の大きさ、早さ」や「歩調」をいったペースを合わせることも有効です。
③メッセージの温度感を合わせる
これはLINEなどのテキストでのやりとりを行う際ですが、文章量や絵文字の数、返信するタイミングなどを指しています。
- 相手が長文ならこちらも長文
- 相手が語尾に絵文字を使うならこちらも絵文字
- 相手がすぐ返信を返すならこちらもすぐ返す
特に、考えてから返信をすることができるLINEでは、比較的ミラーリングがしやすい傾向にあるので、意中の相手がいたら、不自然にならない程度に合わせましょう!
参考:ミラーリングのしすぎは不審がられるので注意
ミラーリング本来のテクニックにのっとれば、模倣したほうが好意を得やすいとされていますが、あまりに露骨でバレてしまうと、不信感を招くので注意が必要です。
例えば、以下のようなミラーリングは、真似をしていることがバレやすいので気をつけましょう。
- 相手が腕を組んだら自分も組む
- 相手が飲みものを飲んだら自分も飲む
- 相手に髪を触るクセがあれば自分も同じタイミングで触る
類似性の法則の活用シーン#2
ビジネス編
仕事の場面においてもミラーリングは効果的とされています。
- 顧客の感情に同調する
- 相手との共通点(類似性)を見つける
- リアクションやトーン、ペースを合わせる
では、それぞれ見ていきましょう。
①顧客の感情に同調する
相手の感情に同調することが効果的です。例えば下記のように、顧客の感情に合わせることで、信頼感を生みやすくなります。
- 相手が悩んでいれば、悩みに共感した態度を見せる
- 相手が喜んでいれば、自分のことのように喜ぶ
おそらくほとんどの方が、電話応対や店頭での接客などで親身になって相談に乗ってもらえたことに対して、不思議と親しみを覚えた経験があるのではないでしょうか。
②相手との共通点(類似性)を見つける
さりげない会話の中で、出身地や大学が同じだったり、趣味が同じだったり、住んでいる地域が近かったりということがわかると、仕事と直接関係なくても話が弾むといったことがあります。
そのため、着席して商談に入る前に相手の緊張や警戒心を解き、場を和ませる「アイスブレイク」としても、ミラーリングはしばしば用いられるテクニックです。
③リアクションやトーン、ペースを合わせる
これも恋愛におけるミラーリングと同様です。
相手が笑えば自分も笑顔になる、相手が自分よりゆっくり話す人であれば自分も話すペースを落とす、などを心がけることによって、同調効果がより高まることが期待できます。
ミラーリングを活用するときの注意点
相手からの好意を得るのに万能と思われがちなミラーリングですが、実は2つの大きな注意点があります。こちらも見ていきましょう。
ミラーリングを活用するときの注意点#1
バレると逆効果なのでほどほどに。
「ミラーリングをしている」ことが相手に気づかれてしまうと、「うっとうしい」「気持ち悪い」という感情を持たれ、逆効果となることが多いので注意してください。
そのため、ミラーリングはあくまでさりげなく、相手がわからないように自然と行うことが重要です。
すべての言動やリアクションをミラーリングする必要はないので、相手が自分に「類似性」を感じてくれているかを察しながら、バランスを見極めることがポイントです。
ミラーリングを活用するときの注意点#2
自分に負担がかからない程度にする
相手に合わせるのは負担がかかるので、無理に合わせようとすると、いつも通りのコミュニケーションすらできなくなってしまう可能性があります。
例えば、相手に同調しなければと焦るあまり、相手に根掘り葉掘り質問をして不快感を抱かせてしまったり、自分はまったく興味のある話ではないのに同調しているように見せたりなど、です。
これらは違和感として相手に伝わってしまいますし、なにより、無理に合わせているので、せっかくの会話も楽しめなくなってしまうでしょう。